アレルギー外来
近年、小児のアレルギー疾患は増加傾向にあり、その種類も多岐にわたります。当院では、お子さま一人ひとりの症状や年齢に合わせた適切な診断と治療を行うため、アレルギー診療に特に力を入れております
アレルギー疾患は、気管支喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、花粉症、蕁麻疹など、様々な症状を引き起こします。これらの疾患は、お子さまの成長や生活に大きな影響を与える可能性があります。
当院のアレルギー外来では、お子さまの症状や検査結果を総合的に判断し、最適な治療法を提案します。また、保護者の方にもアレルギー疾患に関する正しい知識やケアの方法を丁寧に説明させていただきます。
気管支喘息
「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸や、咳が続くお子さんはいませんか?それは気管支喘息(きかんしぜんそく)かもしれません。気管支喘息は、空気の通り道である気管支が慢性的に炎症を起こし、様々な刺激に対して過敏になる病気です。発作が起こると、気管支が狭くなり、呼吸が苦しくなることがあります。しかし、適切な治療を続けることで、症状をコントロールし、健康な子どもたちと変わらない生活を送ることが可能です。このページでは、気管支喘息の症状、原因、治療、そして受診の目安についてご説明します。
気管支喘息の症状について
気管支喘息の主な症状は、以下の通りです。これらの症状は、時間帯や季節、運動後、特定の刺激(アレルゲン)に触れた時などに悪化しやすい傾向があります。
- 喘鳴(ぜんめい): 呼吸をする時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音が聞こえる。これは、狭くなった気管支を空気が通る時に起こる音です。
- 咳: 特に夜間や早朝にひどくなることが多い、痰の絡まない咳。発作時には連続して激しい咳が出ることがあります。
- 呼吸困難: 息苦しさを感じ、呼吸が速く浅くなる。重症の場合には、座っているのも辛くなり、顔色が悪くなることもあります。
- 胸の締め付け感: 胸が締め付けられるような感じや、重苦しい感じを訴えることがあります(特に年長のお子さん)。
これらの症状は、一つだけ現れることもあれば、いくつか同時に現れることもあります。
気管支喘息の原因について
気管支喘息の発症には、様々な要因が複雑に関わっていると考えられています。主な原因としては、以下のものがあります。
- アレルギー: ダニ、ハウスダスト、ペットの毛、カビ、花粉など、特定の物質(アレルゲン)に対するアレルギー反応が、気管支の炎症を引き起こすことがあります。
- 気道感染症: 風邪やインフルエンザなどのウイルス感染が、気管支の炎症を悪化させ、喘息発作のきっかけになることがあります。
- 大気汚染やタバコの煙: これらの刺激物質が、気管支を刺激し、炎症を悪化させることがあります。
- 運動: 運動によって呼吸が激しくなると、気管支が収縮し、喘息発作が起こることがあります(運動誘発喘息)。
- 気象の変化: 急な気温の変化や、低気圧なども喘息発作の誘因となることがあります。
- 遺伝的な要因: ご家族に喘息やアレルギー体質の方がいる場合、お子さんも喘息を発症しやすい傾向があります。
これらの原因が単独で、あるいは複合的に作用して、気管支喘息は発症します。
気管支喘息の治療について
気管支喘息の治療の目的は、発作を予防し、症状がない状態で日常生活を送れるようにすることです。治療は、主に以下の2つの柱で行われます。
- 発作治療薬(症状緩和薬): 発作が起きた時に、速やかに気管支を広げて呼吸を楽にするための薬です。吸入薬(スプレータイプや粉末タイプ)が一般的で、症状が出た時のみ使用します。
- 補足: 気管支拡張薬とも呼ばれます。
- 長期管理薬(コントローラー): 喘息の発作を予防し、気管支の炎症を抑えるために、毎日継続して使用する薬です。こちらも吸入薬が中心で、炎症を抑えるステロイド吸入薬などが用いられます。
- 補足: 抗炎症薬とも呼ばれます。
これらの薬物療法に加えて、以下の点も重要です。
- アレルゲンの除去・回避: アレルギーの原因となる物質をできるだけ生活環境から取り除くように努めます。
- 環境整備: 室内を清潔に保ち、適切な湿度を維持するなども大切です。
- 運動制限の必要性は少ない: 適切な治療により、ほとんどのお子さんは運動を制限する必要はありません。むしろ、体力向上は喘息のコントロールにもつながります。ただし、運動誘発喘息がある場合は、運動前に予防薬を使用するなどの対策が必要です。
- 定期的な受診と指導: 医師の指示に従い、定期的に受診し、症状のコントロール状況や吸入薬の正しい使い方などの指導を受けることが大切です。
受診、定期治療開始の目安
以下のような症状が見られた場合は、早めに小児科を受診してください。
- 「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音が聞こえる
- 咳が長引く、特に夜間や早朝にひどくなる
- 呼吸が苦しそうで、肩や胸で息をするような様子が見られる
- 運動後に咳や呼吸困難が出やすい
- 風邪をひくと、いつもより咳がひどく、呼吸が苦しそうになる
一度喘息と診断された場合は、症状が落ち着いている時でも、定期的な受診と治療を続けることが大切です。自己判断で薬をやめてしまうと、再び発作が起こりやすくなります。
当院では、お子さんの症状や年齢に合わせた適切な治療計画をご提案し、ご家族とともに喘息のコントロールを目指します。気になる症状があれば、遠慮なくご相談ください。
食物アレルギー
病態
食物アレルギーは、特定の食物に含まれるタンパク質に対して体内の免疫システムが過剰に反応することで発症します。小児では卵、小麦、入、大豆、ナッツ類などがよく見られます。
症状は皮膚、呼吸器、消化器、神経、循環器と様々な部分に認められ、皮膚に出ることが一番多いです。複数の臓器に症状がまたがることアナフィラキシーと言い、循環器(血圧低下など)にまで症状が至るとアナフィラキシーショックと呼ばれ、最重症となります
診断
診断には、症状出現時の摂取状況を含めた詳細な問診、血液検査(IgE抗体検査)、食物経口負荷試験などを行います。症状がないのに採血だけで食物アレルギーを判断してしまうことは、本来食べられた食品を遠ざけてしまう過剰除去に繋がりかねないため、安易な採血は極力避けるべきです。
治療
治療は、原因食物の除去が基本となります。原因食物を皮膚から吸収してしまうことや、症状が出るぐらい腸管から吸収することで、次回の症状がより顕著となってしまうため注意が必要です。しかし、症状を誘発しない範囲で摂取することが耐性獲得につながると言われており、この2つを現実的に両立させていくことが非常に重要です。
アトピー性皮膚炎
病態
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す、慢性の皮膚疾患です。赤ちゃんから大人まで、幅広い年齢層に見られますが、特に小児期に発症することが多く、成長とともに自然に軽快するケースもありますが、適切なケアが不十分だった場合、症状が固定化し快癒しにくくなってしまします。原因は、遺伝的な要因や環境的な要因などが複雑に絡み合っていると考えられています。
主な症状
- かゆみ: アトピー性皮膚炎の最も特徴的な症状です。
- 湿疹: 赤みやブツブツ、かさつきなど、様々な症状が現れます。
- 乾燥: 皮膚が乾燥しやすく、外部からの刺激に敏感になります。
診断
アトピー性皮膚炎の診断は、問診や皮膚の状態の観察などに基づいて行われます。
治療法
アトピー性皮膚炎の治療は、以下の3つの柱を中心に進められます。
1.洗浄
- 洗浄: 刺激の少ない石鹸や洗浄剤を使用し、大量の泡で関節や頸部周囲、耳といった汗や汚れが残りやすい部分まで優しく丁寧に洗います。洗おうと意識するあまり、ゴシゴシ擦ってしまうと皮膚を傷つけてしまうため注意が必要です。
2.薬物療法
- 保湿剤: 入浴後すぐに保湿剤を塗布し、皮膚の乾燥を防ぎます。
- 外用薬: ステロイド外用薬を症状に合わせて使用します。塗る面積はfinger tip unit(指の第一関節までチューブを出して、大人手のひら2枚分)が目安となります。2~3日の数日塗布で症状が改善すればまずはOKですが、短期間で消長を繰り返す場合はプロアクティブ療法(症状改善後も一定期間塗り続けて、皮下の炎症を完全に抑制する方法)も行います。
- 内服薬: かゆみが強い場合や、症状が改善しない場合には、抗ヒスタミン薬やステロイド内服薬などが用いられることがあります。
3.悪化要因の除去
- アレルゲン: アレルギーの原因となる物質を特定し、できるだけ避けるようにします。
- その他:汗や搔きむしり、乾燥、温熱・寒冷刺激、刺激の強い生活用品(洗剤、化粧品、化学繊維など)、肌に対する悪化要因と疑ったものをなるべく肌から遠ざけましょう。
上記3つをバランスよく行うことで、ケアなしでプルプルの肌にまで持っていくことは少し難しいかもしれませんが、肌によるトラブルで生活に支障(睡眠不足、集中力低下、他人から指摘されるなど…)をきたさない環境を保ち続けることは可能であり、かつ、とても重要です。逆に掻きむしりを何年にも渡り繰り返すことで、色素沈着や苔癬を招きもとのすべすべのお肌には戻らなくなってしまいます。アトピー性皮膚炎は、根気強く治療を続けることで、症状をコントロールし、快適な生活を送ることができます。
アレルギー性鼻炎
病態
花粉症は、花粉に含まれるアレルゲンに対して、免疫システムが過剰に反応し、鼻水、鼻詰まり、くしゃみ、目のかゆみなどの症状を引き起こす病気です。
診断
診断には、症状が出現するときの状況(季節、場所、接触など)への問診、鼻汁検査、血液検査(IgE抗体検査)などを行います。
治療
治療は、薬物療法(抗ヒスタミン薬内服、抗ヒスタミン点眼薬、ステロイド点鼻薬など)が中心となります。症状を疑うときはしばらく服薬を続けることが重要です。ダニ、ハウスダスト、動物など家庭内の原因が疑われるときは、なるべく掃除や隔離などで光源からなるべく遠ざかることが重要です。
舌下免疫療法
舌下免疫療法は、アレルゲンを含むエキスを舌の下に投与することで、体をアレルゲンに慣れさせ症状を軽減する治療法です。一部抗原(スギ、ダニ)でのみ、状と採血結果が合致することで大体小学校一年生ぐらいになると導入可能です。
最後に
アレルギー疾患は、お子さまの成長や生活に大きな影響を与える可能性があります。気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。